生きづらさ 災害で拍車 神戸新聞 2017年1月11日

性的少数者LGBT

災害時、性的少数者(LGBT)が避難所などで直面する課題が注目され始めてる。
阪神・淡路大震災で被災し、性同一性障害(GID)の当事者として活動する清水展人さん(31)=徳島市=は、昨年末から啓発運動を始め、東日本大震災を経験した人たちは南海トラフ巨大地震に備える高知の団体とともに防災ガイドを作成した。(記者:土井秀人)

「当事者の存在知って」

阪神・淡路で被災清水さん啓発活動

清水さんは当事者支援のNPO法人「Japan GID Friends」の理事長。
全国で啓発活動を行なっており、昨年12月、初めて「震災とLGBT」を題材にした講座を西宮市で開いた。

 

東日本大震災や熊本地震など、国内各地で大災害が起きるたび、厳しい状況に置かれる当事者らのことが気になっていた。

 

「ずっとやりたかったテーマ」と清水さん。「自分が被災した西宮の人たちにも、性的マイノリティーのことをもっと知って欲しかった。声を届けることで災害時の対応も変わってくるはず」

 

長女として生まれ、小学4年の時に西宮市で被災した。当時から性別に違和感があり、男児のような服装や髪型を好んだ。避難所で1週間過ごし、一時的に静岡の親類宅へ。叔母に女の子らしい格好をするように言われても「お世話になっている申し訳なさで、嫌とは言えなかった」。

 

小学校時代は「男女おとこおんな」「オカマ」といじめられた。中学でも好きになるのは女の子で、スカートが苦痛だった。「自分はおかしい」「社会では認められない」と苦しんだ。

 

21歳で性別適合手術を受けると、そのことで職場を追われた。名前を変え、戸籍を変更しても、再就職は困難だった。偏見を恐れ「表に出さず、そっと生きていきたい」と思っていた。

 

妻彩加さん(28)との出会いが人生を大きく変えた。
「悩んできたことが、あなたの強み。傷つき、泣いて、走り回ったからこそ人の痛みがわかる。それがあなたの魅力」。彩加さんの言葉に前を向き歩いていく力をもらった。

 

「まずは自分が乗り越えよう」。結婚式の動画をインターネットで公開するなど発信を始め、2014年に彩加さんの実家のある徳島市に移った。

 

今は伝える立場だ。

LGBTなどについて年間約100本の講演をこなす。「当事者は日常生活から生きづらさを感じており、災害で追い込まれると命にも関わってくる。知ってもらうことで回避できることがたくさんある」と訴える。

 

トイレや生理用品に配慮を。

避難所対応ガイド作成

昨年4月に発生した熊本地震でも性的少数者(LGBT)の問題が浮き彫りになった。

現地の支援団体によると、「男か女か」という好奇の視線に耐えられず、避難所のトイレや生理用品の配給に行けなかったり、避難所を出て車中泊をしたりする当事者もいたという。

 

性的少数者を支援する岩手県の団体「岩手レインボー・ネットワーク」は昨年3月、「にじいろ防災ガイド」を作成した。

災害時に想定される「困りごと」に対して、その「対応策」を掲載している。

 

きっかけは東日本大震災。性的少数者と知られることを恐れ、当事者は被災地で「見えない存在」となっていた。主宰者の山下梓さん(33)=盛岡市=は「声をあげられないだけで、性的マイノリティーはどの地域にも存在する。災害時の備えの一つの視点として持ってほしい」と話す。

 

作成には南海トラフ巨大地震に直面する高知のNPO法人「高知ヘルプデスク」が協力。ワークショップを重ね、A3判にまとめた。同法人の浜口ゆかり代表(59)は「防災に関わる人たちが知ることが大切。このガイドをたたき台にして地域に地域に合わせたものを作って欲しい」とする。

高知ヘルプデスクのホームページからダウンロードできる。