「自分らしく」男性として 朝日新聞 2014年5月8日


親へ告白・手術・結婚・・・動画で配信

性同一性障害(GID)で女から男へ生まれ変わった徳島市在住の清水展人さん(29)が、ネットでカミングアウトし、同じ障害に悩む人々を支援している。
親への告白、手術、結婚・・・・。自らの体験を赤裸々に語った動画は50本以上。

活動を支えるのは「誰もが自分らしく生きられる社会に」という思いと、妻や母、仲間たちだ。

 

清水さんは3人姉妹の長女として兵庫県西宮市で育った。
小さい頃から男の服を好み、好きになるのは女子。高校2年の時、GIDを取り上げたテレビドラマ「3年B組金八先生」を見て、「自分もこれだ」と確信した。
ほっとする一方で、どう生きるか不安も膨らんだ。大阪の夜の街へ行き、男性ホストとして働くGIDの女性に相談したこともある。

短大入学後、「男になりたい」と両親に告白し、病院でGIDと診断された。
教師だった父は性別を変えて生きる厳しさを説き、母の邦子さん(53)も「なぜ大変な人生を選ぶのか」と泣いた。

教師になる夢も壁にぶち当たった。採用試験を2度受けたが、女性として働くことへの迷いもあって落ち続けた。

その間、学校で交通安全教育に携わる指導員として働き、お姉さん役に戸惑いつつも200万円を貯金。家族の理解も得て、21歳の夏、台湾で手術を受け、戸籍変更も果たした。

再出発後も試練は続く。ハローワークでは「性別変更者への職の斡旋は例がない」と言われ、自分で会社を探し回った。

唯一理解してくれた畳屋に就職したが、本当にやりたいことを自問し、医療の道へ進むことを決意。
兵庫県内の専門学校で3年間勉強し、作業療法士の資格を得た。

 

徳島出身の妻の彩加さん(25)とは、この学校で知り合い、ほどなく障害を打ち明けた。
彩加さんは「性格が大事だと思っていたので抵抗はなかった」といい、付き合い始めて1年後、母に事情を説明した。
反対はされなかったが、父親に話したのは、結婚を決める直前。

何度も遊びに来ていた清水さんをすっかり気に入っていた父は、驚きながらも承諾してくれた。

2012年5月に婚姻届を出した。
動画サイトに結婚式の写真を投稿したところ、激励と共感のメールが多数寄せられた。「悩んでいる人がたくさんいることを知り、自分の経験が役立てばと思った」。

彩加さんが構えるカメラの前で体験を語り、投稿を繰り返してきた。

カミングアウトや手術、戸籍変更、体調管理の注意点など、実用的なアドバイスも人気をよんでいる。

 

今年の3月にはネットなどで知り合った仲間らとNPO法人「ジャパンGIDフレンズ」(大阪府吹田市)を設立し、理事長に就任。関西と徳島でセミナーや家族会を重ねている。

 

病院で働く清水さんは「GIDであることを長い間なるべく隠してきた。まず自分自身がコンプレックスなどを取り払いたい。」と話す。

彩加さんは「彼は勉強熱心で行動力がある。人生を真剣に考えている部分にも影響される」という。

 

今はNPOで共に活動する邦子さんも「私にGIDの知識があれば、戸惑い悩むこともなかった。若い人たちの勢いと明るさで社会の偏見を吹き飛ばしてほしい」と応援している。(扇谷純)